高額療養費はいくらまで? 2026年8月からの上限額と、月をまたぐと損をする理由

公的保障・社会保障

最終更新:2026年9月19日 (厚生労働省・全国健康保険協会の公表資料にもとづきます。制度が変わったときは、この記事を書き換えますね)


この記事でわかること

  • いま、1か月の医療費の自己負担にいくらの上限があるのか(2026年8月からの新しい金額)
  • 医療費が100万円かかったとき、実際にはいくら払うのか
  • 同じ治療でも、月をまたぐと自己負担が増えること
  • 新しくできた「年間上限」で、長く治療する方はどうなるのか
  • 窓口で立て替えずに済ませる方法

まず結論からお伝えしますね。1か月の上限は、だいたい9万円です

会社員の方で、年収が約370万〜770万円。

日本でいちばん人数の多い層ですね。

この方が1か月に受けた医療費が総額100万円だった場合。

窓口で最終的に負担するのは、約9万3千円です。

3割負担の30万円ではありません。

9万3千円です。

これが高額療養費制度です。

1か月にかかった医療費のうち、決められた上限を超えた分が、あとから戻ってきます。 (手続きをすれば、そもそも窓口で払わずに済ませることもできますよ。後ほどお話ししますね)


1か月の上限額の早見表(70歳未満・2026年8月〜2027年7月)

上限は、収入によって5つの区分に分かれます。

この表は2026年8月から2027年7月までの診療分に使われます。 (2027年8月からは区分がさらに細かくなる予定です。末尾の「この先の話」をご覧くださいね)

区分標準報酬月額(年収の目安)1か月の上限額4回目から年間上限
ア83万円以上(約1,160万円〜)270,300円+(総医療費-901,000円)×1%140,100円168万円
イ53万〜79万円(約770万〜1,160万円)179,100円+(総医療費-597,000円)×1%93,000円111万円
ウ28万〜50万円(約370万〜770万円)85,800円+(総医療費-286,000円)×1%44,400円53万円
エ26万円以下(〜約370万円)61,500円44,400円53万円※
オ住民税非課税36,900円24,600円29万円

※ 標準報酬月額が15万円以下と確認できた方は、年間上限が41万円になります(払い戻しは2027年8月以降)。

「総医療費」は、窓口で払った額ではありません。

保険が使われた診療費の全体(10割の額)です。

ここを間違えると計算が合わなくなりますからね。

**出典:**全国健康保険協会「高額療養費」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html (2026年9月19日取得)


計算してみますね

区分ウの方が、1か月に総医療費100万円の治療を受けた場合です。

85,800円 +(1,000,000円 - 286,000円)× 1%
= 85,800円 + 7,140円
= 92,940円

窓口では3割の30万円を払いますが、上限を超えた207,060円が戻ってきます。


2026年8月から、何が変わったのか見ていきましょう

2026年8月1日の診療分から、上限額が引き上げられました。

区分2026年7月まで2026年8月から差
ア252,600円+(総医療費-842,000円)×1%270,300円+(総医療費-901,000円)×1%+17,700円
イ167,400円+(総医療費-558,000円)×1%179,100円+(総医療費-597,000円)×1%+11,700円
ウ80,100円+(総医療費-267,000円)×1%85,800円+(総医療費-286,000円)×1%+5,700円
エ57,600円61,500円+3,900円
オ35,400円36,900円+1,500円

区分ウの方なら、入院した月に5,700円ほど負担が増えます。

ただ、上がった話だけではありません。

4回目から下がる金額は、据え置きです

同じ1年のうちに高額療養費を3回受けると、4回目から上限がぐっと下がります(多数回該当)。

区分ウなら44,400円ですね。

この金額は、今回、変わっていません。

そして、「年間上限」が新しくできました

2026年8月から、年単位の上限が設けられました。

1年(8月から翌年7月まで)の自己負担を積み上げていき、上限に達したら、それ以上は戻ってきます。

区分ウ・エなら53万円、区分オなら29万円です。

これは、毎月の上限には届かないけれど、通院がずっと続くという方のための仕組みです。

月ごとの上限だけを見ていると救われなかった層に、天井ができました。

制度を変えた側の説明はこうです。

療養期間が短期の方に「追加のご負担をお願いする」一方で、多数回該当の金額は維持し、新たに年間上限を設けることで、長期療養者や低所得者への支えを強めた、という整理になっています。

**出典:**全国健康保険協会「高額療養費」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html 全国健康保険協会「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/009/002/index.html (いずれも2026年9月19日取得)

ひとつ、実務上の注意があります。

年間上限の払い戻しの申請は、2027年8月から開始です。

いまはまだ申請できません。 (協会けんぽでは、申請書の掲載も準備中とされています)

2026年8月からの1年分が対象になりますので、その間の領収書や明細は残しておいてくださいね。


ここからが本題です。月をまたぐと、自己負担が増えます

高額療養費の上限は、月ごとに計算されます。

毎月1日から末日までで区切られ、翌月には持ち越されません。

つまり、同じ治療でも、1か月に収まるか、2か月に分かれるかで、払う額が変わるのです。

具体的に、いくら変わるのでしょうか

区分ウの方が、総医療費100万円の治療を受けたとしますね。

ケース1:8月にすべて収まった場合

85,800円 +(1,000,000円 - 286,000円)× 1% = 92,940円

ケース2:8月に50万円、9月に50万円に分かれた場合

8月:85,800円 +(500,000円 - 286,000円)× 1% = 87,940円
9月:85,800円 +(500,000円 - 286,000円)× 1% = 87,940円
合計:175,880円

差は82,940円です。

治療の中身はまったく同じです。

カレンダーの都合だけで、8万円以上変わります。

【図1:同じ100万円の治療が、月をまたぐとどうなるか】

理由は図のとおりです。

上限額の定額部分(85,800円)が、月をまたぐと2回発生します。

総医療費の1%分は月ごとに小さくなりますが、それでは埋め合わせになりません。

だからといって、治療をずらしていいわけではありません

これは大事なところなので、はっきりお伝えしますね。

医学的な判断が最優先です。

入院や手術の時期は、体の状態と医療機関の都合で決まります。

お金の都合で治療を遅らせることは、まったくおすすめできません。

この話が意味を持つのは、もともと時期を選べる場合だけです。

予定手術で「今月末でも来月頭でもいい」と言われたときに、月初のほうが有利になりやすい、という程度に受け止めてください。

そして、そういう場面では、遠慮なく主治医や医療機関の相談窓口に聞いてくださいね。

費用の相談は、医療ソーシャルワーカーの仕事のひとつですから。

分かれたほうが有利になることもあります

ややこしいのですが、月をまたいだほうがよい場合もありますよ。

高額療養費を受けた月が1年で3回になると、4回目から上限が下がります(多数回該当)。

月が分かれると、この回数のカウントは早く進みます。

また、年間上限に達する見込みの方であれば、月ごとの増減はやがて頭打ちになります。

長期の治療になるほど、月またぎの損得は小さくなると考えておくのが、実感に近いと思います。


窓口で30万円を立て替えなくて済みます

「あとから戻ってくる」と言っても、いったん30万円を用意するのは大変ですよね。

その必要はありません。

マイナ保険証を使う方法が、いまはいちばん簡単です。

オンライン資格確認を導入している医療機関でマイナ保険証を提示すれば、窓口の支払いが最初から上限額までで済みます。

手続きも書類も要りません。

マイナ保険証が使えない場合は、限度額適用認定証を、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国民健康保険)に申請して、窓口に出してください。

なお、有効期限が切れた従来の健康保険証を窓口で使える扱いは、2026年7月31日で終わりました。

いまは、マイナ保険証か資格確認書で受診します。

資格確認書で受診する方は、上限額までの支払いにするために、原則として限度額適用認定証もあわせて出す必要があります。

それも間に合わなかった場合は、高額医療費貸付制度があります。

支給見込額の8割を、無利子で貸してもらえる制度です。


ひとつだけ、誤解しやすいところがあります

ここまで「上限がある」と書いてきましたが、すべての費用に上限があるわけではありません。

  • 差額ベッド代(個室などの室料)
  • 入院中の食事代
  • 先進医療の技術料
  • 保険がきかない自由診療

これらは高額療養費の対象外で、全額が自己負担です。

つまり、保険がきく治療費に上限があるのであって、入院にかかるお金の総額に上限があるのではありません。

「上限は9万円だから、入院しても9万円で済む」と考えると、ここでずれてしまいます。

→ くわしくは「高額療養費の対象にならないもの──全額自己負担になる4つの費用」で書いています。


知っておくと得をする、あと3つのお話です

世帯で合算できます

同じ健康保険に入っているご家族の医療費は、合算できます。

ひとりで複数の医療機関にかかった場合も同じです。

ただし70歳未満の方は、1つの医療機関につき21,000円以上の自己負担でないと合算の対象になりません。

医科の入院・外来、歯科の入院・外来は、それぞれ別に数えます。

人工透析などは、月1万円です

人工透析を受けている慢性腎不全の方、血友病の方、抗ウイルス剤を使っている方は、特定疾病療養受療証の交付を受けると、自己負担が月1万円になります。 (標準報酬月額53万円以上の70歳未満の透析患者の方は2万円です)

健康保険組合には、独自の上乗せがあることがあります

大企業の健康保険組合には、付加給付といって、法律の上限よりさらに低い上限を設けているところがあります。

「うちは月2万円まで」というような形ですね。

ご自身の健康保険のサイトを一度見てみてください。

ここは、加入先によって大きく違いますからね。


自分がどの区分か調べる方法です

  • マイナポータルにログインして、健康保険証 → 限度額適用認定証関連の情報
  • 勤務先が提出している**「被保険者報酬月額算定基礎届・変更届」**
  • 給与明細の標準報酬月額

区分は年収そのものではなく、標準報酬月額で決まります。

年収の目安はあくまで目安です。


この先の話も少ししておきますね

2027年8月から、所得区分がさらに細かく分かれる予定です。

いまの5区分が、収入に応じてもっと刻まれます。

協会けんぽは、現在の限度額から著しく増加することがないよう配慮しつつ細分化する、と説明しています。

同じ2027年8月には、ほかにも2つのことが重なります。

  • 標準報酬月額が15万円以下の方は、4回目からの上限(多数回該当)が引き下げられます。
  • 年間上限の払い戻しの申請が始まります。 (2026年8月〜2027年7月の1年分が最初の対象です)

新しい区分ごとの金額は、施行が近づき、加入している健康保険から案内が出た段階で、この記事に表として載せますね。

この記事は、そのときに書き換えます。


出典

協会けんぽの2ページは2026年9月19日に、厚生労働省のページは2026年8月28日に確認しました。

金額や仕組みは変わることがあります。

実際に手続きをされるときは、必ずご自身が加入している健康保険にご確認くださいね。

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