高額療養費の対象にならないもの──全額自己負担になる4つの費用

公的保障・社会保障

最終更新:2026年9月19日 (厚生労働省・全国健康保険協会の公表資料にもとづきます。制度が変わったときは、この記事を書き換えますね)


上限があるのは「保険がきく治療費」だけです

高額療養費制度には、1か月の自己負担の上限があります。

年収約370万〜770万円の方なら、1か月の医療費が総額100万円でも、負担は約9万3千円で止まります。

ただ、入院にかかるお金の総額に上限があるわけではありません。

上限があるのは、健康保険がきく治療費だけなんです。

それ以外の費用は、いくらかかっても高額療養費では戻ってきません。

「上限は9万円だから、入院しても9万円で済む」と考えていると、退院時の請求書でずれてしまいますよね。

対象にならない主なものは、次の4つです。

  1. 差額ベッド代(個室などの室料)
  2. 入院中の食事代
  3. 先進医療の技術料
  4. 保険がきかない自由診療

このうち、いちばん金額が大きくなりやすく、しかも「払わなくてよい場合がある」のが差額ベッド代です。

ここから詳しく書いていきますね。


① 差額ベッド代 ── 払わなくてよい場合があります

正式には特別療養環境室料といいます。

個室や少人数の部屋を使ったときの、追加の室料のことですね。

1日あたりの平均は、7,026円です。

医療機関が地方厚生局などに報告した内容を国が集計したもので、2025年8月1日時点の数字です。

差額ベッドの対象になっている病床は287,598床、総病床数の23.0%にあたります。

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第653回・2026年7月22日)資料 総-4-2「(令和7年)主な選定療養に係る報告状況」(令和7年8月1日現在) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001726223.pdf (2026年9月4日取得)

ただ、この平均で予算を立てないでくださいね。

この7,026円には、1人室も4人室も混ざっています。

同じ集計を部屋のタイプ別に見ると、こうなります。

部屋1日あたりの平均
1人室8,710円
2人室3,161円
3人室2,815円
4人室2,894円

病院によっても、まったく違います。

国が一律に決めているものではなく、各医療機関が独自に設定しているためですね。

同じ集計での最低は50円、最高は385,000円でした。

平均を知る意味は、予算を組むことではありません。

「1日7千円が積み上がる種類の費用なのだ」と知って、自分が入院する病院の金額を確かめるところにあります。

1か月入院すれば、治療費の上限額を超えることも珍しくありません。

ここが大事なところです。

病院が差額ベッド代を請求してはならない、3つの場合

厚生労働省の通知では、差額ベッドの提供は患者の自由な選択と同意にもとづいて行われる必要があり、患者の意に反して入院させられることのないようにしなければならないとされています。

そのうえで、次の3つのいずれかに当てはまる場合、保険医療機関は差額ベッド代を請求してはならないと定められています。

(1) 同意書による同意の確認を行っていない場合 (同意書に室料の記載がない、患者側の署名がないなど、内容が不十分な場合を含みます)

(2) 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合

(3) 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

出典:神奈川県「よくあるお問合せ」(厚生労働省の通知の要約) https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n5p/cnt/f7818/index.html (2026年8月28日取得) 根拠となる通知:平成18年3月13日付け保医発第0313003号(最終改正:令和8年3月27日付け保医発0327第6号、令和8年6月1日適用)

(2)「治療上の必要」の例

通知には、次のような患者が例として挙げられています。

  • 救急患者や術後の患者などで、病状が重篤なため安静を必要とする方、または常時監視を要し、適時適切な看護と介助を必要とする方
  • 免疫力が低下し、感染症にかかるおそれのある方
  • 集中治療が必要な方、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の方

医師の判断で個室に入った場合は、この(2)に当たります。

(3)「実質的に患者の選択によらない」の例

  • 他の患者への院内感染を防ぐため、主治医等の判断で入院させたと認められる場合
  • 特別療養環境室以外の病室が満床であるため、特別療養環境室に入院させた場合

最後のひとつは、覚えておく価値があります。

「大部屋が空いていないので個室になります」という説明を受けたとき、それは(3)に当たる可能性がありますよ。

同意書にサインする前に、確認すること

差額ベッド代を請求するには、同意書があり、そこに室料が記載されていて、患者側の署名がある必要があります。

つまり、確認するのは同意書の中身です。

  • 1日いくらか、金額が書かれているか
  • 自分が希望して個室に入るのか、それとも他に空きがなかったのか
  • 医師から「治療上、個室が必要」と言われていないか

入院の手続きは、体調が悪いなかで、たくさんの書類にまとめて署名する場面ですよね。

そのなかに、この1枚が混ざっています。

なお、「治療上の必要」に該当しなくなった場合など、(2)や(3)に当てはまらなくなったときは、患者の意に反して個室への入院が続けられることのないよう、改めて同意書で意思を確認するなどの配慮をすることとされています。

入院の途中で状況が変わった場合も、同じように確認できますよ。

納得できないとき

目的は、争うことではありません。

確かめることです。

厚生労働省の通知は、病院を責めるための武器ではなく、話し合うための共通の材料です。

実際、この通知を紹介している自治体のページにも、行政が交渉や紛争解決を行うことはできないので、通知等を根拠に当事者間でよく話し合ってほしい、と書かれています。

順番はこうなります。

  1. まず、病院の窓口か、医療ソーシャルワーカーに相談してください。 入院費の相談は、医療ソーシャルワーカーの仕事のひとつです。 「大部屋を希望していたのですが」と伝えるだけで、状況を整理してもらえることがあります。
  2. 同意書の控えと領収書は、残しておいてください。 争うためではなく、あとから確かめるために要ります。
  3. それでも話がつかないときの相談先として、地方厚生局があります。

ひとつ、公平のために書いておきますね。

この話は「差額ベッド代を払うな」という意味ではありません。

静かな環境で過ごしたくて自分から個室を選んだのであれば、その室料を払うのは当然のことです。

問題になるのは、選んでいないのに請求される場合だけですからね。


② 入院中の食事代

2026年6月1日から、一般所得者の負担は1食550円です。 (それ以前は1食510円でした。食材費や光熱費の値上がりを受けて、1食40円引き上げられています)

1日3食で1,650円。

  • 2週間の入院で 約23,000円
  • 30日の入院で 約49,500円

この食事代は、高額療養費の対象になりません。

治療費がいくら高額になっても、食事代は別に、全額を払うことになります。

住民税非課税世帯の方は、申請により減額を受けられますよ。

「限度額適用・標準負担額減額認定証」を、加入している健康保険に申請してください。

申請しないと減額されません。 (減額後の金額も、2026年6月に1食20〜30円引き上げられています)


③ 先進医療の技術料

厚生労働大臣が認めた「先進医療」を受けた場合、その技術料は全額が自己負担になります。 (診察や検査、投薬など通常の治療と共通する部分には、健康保険が使えます)

技術によっては、数百万円になるものもあります。

ただ、この項目については、落ち着いて読んでいただきたいと思っています。

先進医療は、受ける方がごく限られた治療です。

対象となる病気も、実施している医療機関も、技術ごとに決まっています。

「入院したら先進医療の費用がかかるかもしれない」という種類のものではありません。

金額の大きさだけが強調されて紹介されることが多い項目ですが、まず確かめるべきなのは、その治療が自分に関係するのかどうかです。

実際に選択肢として提示される場面が来たときに、担当の医師と、費用を含めて相談してくださいね。


④ 保険がきかない自由診療

健康保険の対象になっていない治療は、全額が自己負担です。

この場合、その治療にかかわる診察や検査の費用も、あわせて自己負担になります。

先進医療のように「一部は保険、一部は自己負担」という扱いにはなりません。


そのほか、意外と積み上がるもの

  • 家族が見舞いに通う交通費、駐車場代
  • 病衣やタオルのレンタル代
  • 日用品、テレビカード
  • 洗濯代

ひとつずつは小さい金額ですが、入院が長くなるほど積み上がります。

遠方の病院に入院した場合、家族の交通費がいちばん大きくなることもあります。


では、どう考えればいいのか

ここまで読んで、「やっぱり保険に入っておいたほうがいいのでは」と思われたかもしれませんね。

その判断は、この記事ではしません。

お伝えしたかったのは、ひとつだけです。

**「上限があるから大丈夫」でも「上限の外があるから危ない」でもなく、金額の桁を知ったうえで決めてください、**ということです。

そのために必要な数字は、次の3つです。

  1. 保険がきく治療費の上限(1か月いくらまでか)→ 高額療養費はいくらまで?
  2. 上限の外にある費用(この記事)
  3. いま払っている、または払おうとしている保険料の総額

3つ目が抜けたまま1つ目と2つ目だけを見ると、不安の側にしか材料がない状態になります。

月々の保険料に12をかけて、払込みが終わるまでの年数をかけてみてください。

そこで初めて、比べられるようになりますよ。


出典

いずれも2026年8月28日に確認しました(中医協の資料のみ2026年9月4日)。

食事代の金額と差額ベッドの通知番号は、2026年9月19日に改めて確認しています。

金額や仕組みは変わることがあります。

実際の費用については、必ず入院される医療機関と、ご自身が加入している健康保険にご確認くださいね。

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