最終更新:2026年9月19日 (全国健康保険協会・日本年金機構・厚生労働省/ハローワークの公表資料にもとづきます。制度が変わったときは、この記事を書き換えます)
この記事でわかること
- 傷病手当金の終わり(支給を開始した日から通算して1年6か月)と、その数え方
- その先の二手(失業給付/障害年金)と、「どちらか一方しか選べない」わけではないこと
- 病気で退職するときに、日付と順番で結果が変わること(退職日/受給期間の延長)
- 傷病手当金と障害厚生年金が重なったとき、あとから返すことがあること
- 自営業・フリーランスの場合は、どこが違うのか
① 傷病手当金には、終わりがあります
会社員の方が病気やけがで働けなくなったとき、健康保険から傷病手当金が支給されます。
1日あたりの額は、支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 3分の2。
期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
「通算して」というのが、いまの数え方なんですね。
2022年1月から、途中で働いた日は数に入らなくなりました。
復職して、また休むことになった場合、残っている日数を使えます。
治療をしながら働く方にとっては、この数え方のほうが合っていますよね。
ただ、終わりがあることは変わりません。
1年6か月は、長いようで、区切りが見えます。
そして、その区切りが来る前に動いたかどうかで、その後の数か月が変わります。
次の手続きには、どれも時間がかかるからです。
この記事は、その「先」の地図です。
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html (2026年9月19日取得)
② その先は、二手に分かれます
傷病手当金が終わったあと、行き先は体の状態で分かれます。
| 失業給付(雇用保険の基本手当) | 障害年金 | |
|---|---|---|
| どういう方向けか | 働ける状態にあり、次の仕事を探す方 | 働ける状態に、まだ戻っていない方 |
| 出どころ | 雇用保険 | 国民年金・厚生年金 |
| 手続きの窓口 | ハローワーク | 年金事務所(または市区町村) |
失業給付(基本手当)
基本手当を受けるには、**「いつでも就職できる能力があるのに、職業に就くことができない状態」**であることが必要です。
ハローワークは、次のような状態のときは基本手当を受けられないと明示しています。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html (2026年9月4日取得)
ここが、療養中の方にとっていちばん大事な一文です。
まだ働けない状態のまま失業給付を受け取ることはできません。
だからこそ、次の③(受給期間の延長)が必要になります。
障害年金
障害年金は、加入している制度によって受けられる範囲が違います。
- 障害基礎年金:障害等級1級・2級
- 障害厚生年金:1級・2級・3級。さらに、3級より軽い障害が残ったときは障害手当金(一時金)
厚生年金に加入している間に初診日がある方は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。
会社員の方のほうが、対象になる範囲が広いのはこのためです。
出典:日本年金機構「障害年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html (2026年9月4日取得)
「どちらか一方」ではありません
このふたつは性質が正反対なので、「同時には受け取れない」と説明されることがあります。
でも、これは正確ではありません。
障害年金と雇用保険の基本手当のあいだには、支給を調整する規定がないのです。
両方の要件を満たせば、減額なしで受け取れます。
障害厚生年金3級を受けながら働いている方が、仕事を探すために基本手当を受けるのは、めずらしいことではありません。
給付の調整があるのは、老齢年金と基本手当の組み合わせのほうです。
65歳になるまでの老齢厚生年金を受けている方が求職の申込みをすると、その間、年金が全額支給停止になります。
出典:日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-03.html (2026年9月4日取得)
ただ、繰り返しになりますが、基本手当のほうには**「いつでも就職できる能力があること」**という要件があります。
「両方もらえる制度」なのではなく、その2つの要件を同時に満たす方がいる、ということですね。
③ 病気で退職するとき、日付と順番で結果が変わります
ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。
(1) 退職しても、傷病手当金は続けられることがあります
資格喪失後の継続給付といいます。
次の条件を満たせば、退職後も残りの期間について傷病手当金を受けられます。
- 退職日までに、継続して1年以上の被保険者期間があること (任意継続・共済組合・国民健康保険の期間を除く)
- 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」(資格喪失後の継続給付について) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html (2026年9月19日取得)
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(よくあるご質問) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html (2026年9月4日取得)
そして、ひとつ落とし穴があります。
退職日に出勤すると、この継続給付の条件を満たさなくなります。
挨拶や引き継ぎのために最終日だけ出社する、というのは自然な行動ですよね。
でも、それで退職日の翌日以降の傷病手当金が支払われなくなってしまいます。
もうひとつ。
退職後の継続給付は、いったん働ける状態になると、そこで終わります。
その後また働けなくなっても、再開できません。
在職中の「通算1年6か月」の考え方とは違うところです。
(2) 失業給付は、あとに回せます
働けない状態で退職した場合、失業給付はすぐには受けられません(②のとおりです)。
このとき使うのが、受給期間の延長です。
- 基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間 (所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)
- 病気・けが・妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上働けないときは、その働けなかった日数だけ受給期間を延長できます
- 延長できるのは最長3年間。もとの1年と合わせて、最大4年 (所定給付日数330日・360日の方は、もとの期間が長いぶん延長の上限が短くなり、合計の上限はやはり4年です)
つまり、回復してから、あらためて仕事を探せばいいということですね。
(3) 「権利が消える」のではなく、「間に合わなくなる」
この手続きは、期限が緩和されています。
引き続き30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに申請するのが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までであれば申請できます。
ただ、厚生労働省の資料は、あわせてこう注意しています。
申請が遅い場合、延長をしても所定給付日数のすべてを受給できないことがあります。
受給期間が残り3か月しかない時点で手続きをすれば、受け取れるのは3か月分までです。
日数そのものは、待ってくれません。
出典:厚生労働省「平成29年4月1日から、雇用保険の基本手当について受給期間延長の申請期限を変更します」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf (2026年9月19日取得)
ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html (2026年9月4日取得)
(4) 名前の似た、もうひとつの「傷病手当」
ハローワークで求職の申込みをしたあとに病気やけがで働けなくなった場合、15日以上続くときは、雇用保険の傷病手当が支給されます。 (14日以内なら基本手当が支給されます)
日額は基本手当と同額です。
健康保険の傷病手当金とは、別の制度です。
名前がよく似ているので、窓口で話すときは「健康保険のほうです」「雇用保険のほうです」と添えると、話が早くなりますよ。
④ 傷病手当金と障害厚生年金が重なったとき
この節は、あとからお金を返すことになりやすい場所です。
同じ(または関連する)病気やけがで障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は支給されません。
ただ、全部が消えるわけではありません。
- 障害厚生年金の額(同じ事由の障害基礎年金があるときは、その合計額)÷ 360 が、傷病手当金の日額より低いときは、その差額が傷病手当金として支給されます
- 障害手当金(一時金)の場合は、傷病手当金の合計額がその額に達するまでのあいだ、支給されません
たとえば、傷病手当金の日額が6,000円、障害厚生年金が年額180万円の場合。
180万円 ÷ 360 = 5,000円ですから、差額の1,000円が傷病手当金として支給されます。
調整されるのは傷病手当金のほうで、年金額は調整されません。
調整されない組み合わせもあります
- 別の病気・けがによる障害厚生年金 → 調整なし
- 障害基礎年金だけを受けている場合 → 調整なし
気をつけるのは、認定が遡ったときです
障害年金は、認定が過去にさかのぼって決まることがあります。
すると、すでに受け取った傷病手当金と期間が重なります。
この重なった分は、あとから返すことになります。
対処は、ひとつだけです。
障害年金が決まったら、できるだけ早く、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に連絡してください。
連絡が遅れるほど、返す額は大きくなってしまいます。
なお、退職後に継続給付を受けている方が老齢年金を受けられるようになったときも、同じ形の調整があります。 (年金額 ÷ 360 が傷病手当金の日額より低ければ差額が支給されます)
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」/「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(よくあるご質問) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html (2026年9月4日取得)
⑤ 自営業・フリーランスの場合
ここまでは、会社員の方のお話でした。
自営業やフリーランスの方は、地図の形が違います。
- 傷病手当金:国民健康保険の傷病手当金は、法律で必ず行うと決められた給付ではなく、保険者が実施を決められる給付です。実際には、ほとんど実施されていません
- 失業給付:雇用保険に加入していないため、ありません。受給期間の延長も関係しません
- 障害年金:国民年金から障害基礎年金が支給されます。ただし対象は1級・2級のみで、3級と障害手当金は障害厚生年金にしかありません
つまり、働けなくなったときに、いちばん薄いのがこの層です。
会社員として厚生年金に加入していた時期に初診日がある場合は、その後に独立していても障害厚生年金の対象になりえます。
初診日がいつで、そのとき何に加入していたかが分かれ目になります。
時期があいまいなときほど、年金事務所で確認する価値がありますよ。
迷ったときの、相談先
目的は、権利を主張することではありません。
自分がどこにいるのかを確かめることです。
制度がまたがっているので、1か所ですべては分かりません。
順番はこうなります。
- 入院中・通院中の方は、まず医療ソーシャルワーカーへ。 (病院の相談室にいます。制度の全体像を一緒に整理してもらえる、いちばん近い窓口です)
- 傷病手当金のことは、加入している健康保険へ (協会けんぽの支部、または勤務先の健康保険組合)
- 障害年金のことは、年金事務所へ (国民年金だけの期間の方は市区町村の窓口でも受け付けています)
- 失業給付と受給期間の延長は、住所地のハローワークへ。 (申請は郵送や代理人でもできます)
そして、退職の日を決める前に、この4つのどこかに一度あたってください。
退職日は、あとから動かせませんからね。
では、どう考えればいいのか
ここまで読んで、「公的な制度だけでは足りないのでは」と思われたかもしれませんね。
その判断は、この記事ではしません。
お伝えしたかったのは、ひとつです。
傷病手当金には終わりがあり、その先にも道はあるけれど、道ごとに条件と期限があるということ。
ここを知らないまま「足りないかもしれない」と考えると、不安の側にしか材料がない状態になってしまいます。
備えを考えるなら、数字は3つ必要です。
- 公的な保障が、いくら、いつまで出るのか
- 上限の外にある費用 (→ 高額療養費の対象にならないもの)
- いま払っている、または払おうとしている保険料の総額
3つ目は、ご自分でしか計算できません。
月々の保険料に12をかけて、払込みが終わるまでの年数をかけてみてください。
そこで初めて、比べられるようになります。
出典
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(よくあるご質問) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html
- 日本年金機構「障害年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-03.html
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 厚生労働省「受給期間延長の申請期限を変更します」(求職者の方へ) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf
協会けんぽ「傷病手当金」と厚生労働省「受給期間延長の申請期限を変更します」は2026年9月19日に、それ以外は2026年9月4日に確認しました。
要件や金額は変わることがあります。
また、個別の可否は、ご自身の加入状況と病状によって判断されます。
実際の手続きの前に、必ず、加入している健康保険・年金事務所・ハローワークにご確認くださいね。

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